周辺光量落ちが存分に楽しめる、超広角
おすすめ度
購入のしやすさ 3/10
非常に珍しいレンズではありませんが、流通量が豊富ではなく、比較的高値で取引されています。旧ソ連製レンズとしては、やや高価なレンズです。
使いやすさ 9/10
小型、軽量な20mmレンズが使いにくい訳がありません。しかも、Sony用マウントアダプターを介在させても小型なままです(パンケーキともてはやされるレンズの多くは、マウントアダプターを含めると大型になるものが多いです。)。唯一の残念なポイントは、絞り設定方法です。Orion 28mmやJupiter-12 35mmも同様ですが、フロント側からレンズをのぞき込み、前玉を触らないように回転させる絞り操作は、かなり面倒です。
現代レンズと比較した描写の独自性 8/10
Orion 28mmよりも広角なだけあって、荒れます。周辺光量落ちは当然入ります。絞り込むと、さらに周辺光量落ち、周辺の色かぶりがあらわれます。中央は淡い色のりになります。鏡筒がフード兼用になっており、十分に逆光対策をしているのにも関わらず、フレアもゴーストも派手に発生します。周辺も流れて怪しい解像になります。歪みこそ少ないですが、あまりシャープな像は期待できません。「ザ・広角オールドレンス」要素を詰め込んだ、とても面白いレンズです。
総合 8/10
オリジナルレンズ構成で、20mm広角に挑戦したユニークなレンズです。四隅の解像はまったく期待できません(駄目な点が長所ですが)。おそらく設計段階でも四隅の描写なんて考えてなかったのでしょう。四隅の描写は、「これは本当に周辺光量落ちなのだろうか?まさか、中央部が単にフレアなのではないだろうか?」と一瞬思わせるくらいの、危うさも持っています。何れにせよ、現代AFレンズやスマートホンではなく、敢えてこのレンズを選択する意義は、十分にあると思います。
このモデルと個体
Russar MR-2は4群6枚で、おそらくTopogonを発展させた形式の様に見えます。Topogonは貼り合わせが無いため、5群8枚のBiogon 21mm F4.5を簡易化した様にも思えますが、Biogonの方が1954年販売開始と後発になります。このことから、Russar MR-2はソ連独自の設計に基づいて作られたレンズであると考えるのが自然です。Soviet CAMS.comによると、量産モデルは1957年から1995年まで作られていました。プロトタイプPT0205 は1956年に製造された様で、諜報活動に使用されたのでしょうか。ハイスピードフィルムを用いて、絞り込むとパンフォーカスが容易に作れるレンズです。ソ連崩壊の1991年の以前の、民生用カメラのAF性能を考えると、このレンズの使用価値は十分あったのではないかと推測できます。今回使うRussarはPT0260 で、そのシリアル番号から、1992年に作られた個体の様です(一部初期Russar MP-2には、製造年と異なる番号が付与されるものもあるようです。このレンズは、モデル末期の個体のようです。
撮影準備
このレンズはL39マウントになります。
マウントアダプター
パターン1 L39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き) :L39をLeica Mマウントに変換する方法
利点
- 絞りの表記などを中央に揃えられます。
パターン2 M39-M42 + M42-M42(10-15mm)+M42-NEX(プレート) :M42ヘリコイドアダプターを用いる方法
欠点
- レンズをマウントするとパターン1と比べ、180°反対になります。
パターン3 L39-LM + TECHART LM-EA9 :AF化する
利点
- AF化が可能です。
欠点
- このレンズの特徴である、軽量&ノブの迅速な回転によるフォーカシングによる機動性が喪失します。
- TECHART LM-EA9は高価です。
- 重くなります。
撮影(作例)
周辺光量落ちが激しくあります。さらに、絞ると光量落ちが多くなります。
想像通り、端の解像力は絶望的です。
しかし、歪みは気になりません。
縦構図で使っても、なんとか耐えれる歪み量です。
ゴースト&フレアが発生します。
広角ですので、手持ちスローシャッターも容易です。
最短0.5mで、ヘリコイドを併用すると、かなり寄ることが出来ます。また、ヘリコイドを使用しなくても、深い被写界深度で、なんとかなりそうです。
広角は、ファインダー or モニターをみなくてもなんとかなります。
広角は、後でトリミングをして使う方法も良いのかも知れません。
黒潰れはしにくく、暗部の階調がかなりあります。
ありがとうございました。