空気レンズの変形Sonnarは、Sonnar+ぐるぐるボケだった
おすすめ度
購入のしやすさ 3/10
Cardinarは、レンジファインダー用カメラであるWerra (Carl Zeiss Jena)とPentina (Pentacon) 用として、販売されていたレンズです。非常に多くの本数のレンズを販売したCarl Zeiss Jenaの中では、かなりマイナー(レア)なレンズ名です。加えて、Werra用とPentina用で焦点距離も、開放F値も異なります。Werra用はCardinar 100mm F4、Pentina用はCardinar 85mm F2.8のみとなります。
希少な物は高価にたりがちですが、WerraマウントとPentinaマウントは、どちらもカメラ側から絞りを制御するという癖のあるマウントで、そのアダプターは多く流通していないため人気が無く、比較的購入しやすい価格で販売されています。
Pentinaマウント用レンズは、小さなピンを押すことで絞り込む構造です。それに対して、Werraマウントは、レンズ下部のプレートを捻ることで絞り込む構造です。いずれもマウントアダプターが必要になります。
使いやすさ 1/10 (7/10)
マウントアダプターを用意する必要があります。これが最大の問題です。また、頻繁な交換を想定していなかったのか、マウントは比較的難しめな操作になります。
- マウントを行い、使用出来る状態になると、オーソドックスな操作系です。
- 開放F値4は、暗めに感じますが、十分な解像をしており、開放から使っていけるレンズです。
- 一定以上の耐逆光性能を備えています。
- 今回用意したマウントアダプターは、いずれも絞り値が分からないものであったため、レンズ内の絞り羽根を確認する必要がありました。
- 重量は、198gで100mmの単焦点レンズとしては、決して重くはありませんが、長時間保持するには、やや重く感じます。
- 最短撮影距離が1.5mは、寄れません。
現代レンズと比較した描写の独自性 7/10
- マイルドですが、開放の最短撮影距離付近では、遠景・近景にぐるぐるボケが発生します。
- 開放でも絞りが正円にならず、六角形の大きなボケが現れます。
- 順光では、sonnar型らしい、高コントラストでこってりとした色のりを見せます。
- ある程度の耐逆光性能は備えていますが、やはりフレアゴーストは発生します。
総合 6/10
マウントアダプターの問題はありますが、それを解決できれば、描写は素晴らしくとても良いレンズです。オリジナルSonnarとは異なり、Cardinar銘が気になる人には、是非ともおすすめします。2本あるCardinarでは、スペックを見ると、85mm F2.8の方が魅力的に見えます。しかし、以下の2点で100mm F4の方が魅力的です。1)100mm F4の方が空気レンズがあることを考えると、85mm F2.8よりも、オリジナルSonnarよりも離れた設計です。2)マウントアダプターを作成する場合、Pentina用よりも、Werra用の方が作成しやすいです。
このモデル
Wikipediaによると、Werraは1954年からCarl Zeiss Jenaが製造を行った小型カメラの名称です。Werraの中でも、1957年販売開始のWikipediaではWerraⅢ以降、レンズ交換式になったとの表記がありますが、nobrin-7 さんのBlogではWerraⅡでレンズ交換が可能との表記があります。この点に関しては、検証できません。何れにせよ、Cardinar 100mm F4は、レンズ交換式Werraに合わせて、供給されたレンズです。
Werraには、貼り革が黒色かオリーブ色の、二色が販売されていました。今回は、Werraらしい、オリーブを選択しました。購入した個体は、コバ材由来の曇りとカビがあったため、分解清掃を行いました。前群の分解は、JAPAN HOBBY TOOLのゴム製オープナーAで容易に分解出来ました。
LENS-CLUB.RUによれば、Cardinar 100mm F4は、上記構成図になっています。この紹介では、3群5枚とされていますが、実際に分解してみると、構成図通り、前群が3群の4群5枚構成です。つまり、2枚目と3枚目の間は、貼り合わせがなく、スペンサーが入っていました。
spiralさんは、Cardinar 85mm F2.8は、 Sonnar 85mm F2の兄弟レンズであると説明されています。Cardinar 100mm F4はCardinar 85mm F2.8よりも、空気面が増えています。しかし、Cardinar 100mm F4も、Carl Zeiss Jenar Sonnar 135mm F4に、比較的構成が近いSonnar型です。
撮影準備
市販品マウントアダプター
Werraマウントアダプターは、ebayでRareAdapters.comさんが販売しています。これは、金属製で非常にしっかりしています。私も購入しました。
しかし、残念なことに、Sony Eマウント用しか見つけることが出来ませんでした(NikonFマウントや、M42マウント、Leica Mマウント、L39マウントなど)。これは、最短撮影距離を短縮することが出来ません。
3Dプリンター出力(Werra to L39)
3DプリンターでWerra to L39マウントアダプターを作ってみました。
ebayでRareAdapters.comさんが販売してるものと比べると、明らかに強度は落ちます。下記3Dプリンター出力品は、あくまでも一時的に気軽に楽しむ人向けです。
硬度のあるOVERTURE PLA+ フィラメントを用いて出力しました。
Parts 1とParts 2でレンズを固定します。
Parts 3は絞り制御の切り欠きに固定します。
Parts 4はParts 3の反対側に配置します。
Parts 5で、Parts 3とParts 4を締めて、一体化します。必要に応じて、これらは接着剤で固定する方が良いかもしれません。
内面処理
3Dプリンター出力品の内面は、アクリル塗料(ターナー色彩 アクリルガッシュ 暗黒ブラック)の塗布を行いました。
この塗布には、筆を用いるよりも、キムワイプか、ケイドライが向いていると思います。
ヘリコイド付きマウントアダプター
パターン1 L39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き) :L39をLeica Mマウントに変換する方法
L39-LMは各種類ありますが、どれを用いても変化がありません。
パターン2 M39-M42 + M42-M42(10-15mm)+M42-NEX(プレート) :M42ヘリコイドアダプターを用いる方法
パターン3 L39-LM + TECHART LM-EA9 :AF化する
撮影(作例)
マイルドですが、開放の最短撮影距離付近では、遠景・近景にぐるぐるボケが発生します。
開放でも絞りが正円にならず、六角形の大きなボケが現れます。
順光では、sonnar型らしい、高コントラストでこってりとした色のりを見せます。
ある程度の耐逆光性能は備えていますが、やはりフレアゴーストは発生します。
開放でも、オールドレンズのレベルではシャープです。
時々、線の太い描写も見られます。
ありがとうございました。