Voigtländer SKOPAREX 35mm F3.4 (DKL)

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EXの意味とこのレンズの癖

おすすめ度

購入のしやすさ 4/10

日本国内には数が少なく、かなり高め(2万5千円ほど)で流通しています。しかし、ebayでは、一万円以下前後程度の価格で販売されています。この日本国内価格は、マイナーなデッケルマウントレンズで比較すると、Retina-Xenon同等の価格になりますので、いささか高すぎると思います。日本国内で高値で流通のには、以下が考えられます。コシナ社のVoigtländer COLOR-SKOPAR銘の復刻とその人気、Leitz 35mmの異常な程の価格高騰などです。

使いやすさ 4/10

  • 35mmは非常に使いやすい画角です。
  • 最短撮影距離は1m (3.5 feet)で、35mmにしてはかなり長めです。ヘリコイド付きマウントアダプターで対応します(下に続く)。
  • レトロフォーカス型レンズの多くは、ヘリコイド付きマウントアダプターで最短撮影距離を短縮すると、かなり酷い収差が現れることがあります。しかし、このレンズは、ヘリコイド付きアダプターで繰り出しても、あまり収差に影響を受けませんでした。一方で、一般にレトロフォーカス型が得意とする、パンフォーカス(過焦点距離)にした場合、真のピント面がシャープすぎるのか、真のピントから外れた部分は酷い描写になってしまいました(おそらくフィルム時代では許されたのでしょう)。絞り込むと気難しい癖玉になります。

現代レンズと比較した描写の独自性 7/10

  • 順光では濃厚な色がのります。
  • この時代のレンズには珍しく、樽形歪みがあります(高評価ポイント)。
  • 逆光ではゴーストが発生します(高評価ポイント)。
  • 二線ボケが表れます(高評価ポイント)。
  • 合焦面の描写は非常にシャープです。
  • 絞り込むと、真の合焦面以外が変わったボケになります。現代の高解像度カメラには不向きなレンズなのかも知れません。

総合 6/10

Voigtländerの銘や35mmという画角、全く無理をしていない開放F値3.4から、何事もこなす優等生のようなレンズだと思っていました。しかし、かなりの癖があるレンズです。同じデッケルマウント35mmレンズであれば、Retina-Curtagon 35mm F2.8の方が圧倒的に使いやすいです。近年販売された、Cosina製Asphericalを採用したレンズや、5群7枚などのColor-SKOPARではなく、DKLマウントアダプターを購入してまで、このレンズを選ぶのに相応しい人は、これらの癖を受け入れられる寛容な人です。

このモデル

Voigtländer Bessamatic 用の交換レンズとして1958年に販売されたこのレンズは、5群6枚構成(ALL PHOTO LENSES)です。構成は名前の通りSKOPAR(Tessar型)の前に補正レンズを配置し、レトロフォーカス化したものですが、2枚目のレンズ配置位置が独特です。2枚目の配置位置が1枚目の近くに設置されることが多いと思いますが、このレンズは3枚目の近くに設置されています。このレンズのシャープな像は、SKOPAR(Tessar型)譲りなのでしょう。

Wikipediaによると、Voigtländerから、Bessamatic用に1958年にリリースされたレンズは、以下の3本だけのようです。

  • Skoparex 35mm F3.4
  • Color-Skopar X 50mm F2.8
  • Super-Dynarex 135mm F4.0

つまり、Skoparex 35mm F3.4は、Bessamatic 用の交換レンズとしては最初期から販売されていたことになります。

Wikipediaの記載では、このレンズには、バリエーションがあり、製造時期で差異があるようです。

  • I型  最短撮影距離が0.9(1) m か 3 (3.5) ftのいずれか 幅狭グリップリング
  • II型  最短撮影距離が0.9(1) m と 3(3.5) ftの両方記載 幅狭グリップリング
  • III型 最短撮影距離が0.9(1)m と 3 (3.5) ftの両方記載 幅広グリップリング
  • IV型 最短撮影距離が0.4m と 1.5 ftの両方記載 幅広グリップリング

この個体はⅡ型です。シリアル番号は6,558,***で、Camera-Wiki.orgによれば1965年の製造のようです。

撮影準備

DKLマウントアダプターは、所有しているものがいくつかありますが、今回は

DKL-LM + LM-NEXとしました。

撮影(作例)

開放から十分にシャープです。

逆光では、遠慮無くゴーストが発生します。

光源のボケは輪郭がくっきりとしたボケで、好みが分かれそうです。

絞り込むと、気難しさがあらわれます。

樽形の歪みは大きめです。

太陽光が多いと、濃い暖色系の発色をします。

アンダーは寒色に転びやすくなります。

35mmは、高解像度機で撮影して、後でトリミングするのにも良いのかも知れません。

しかし、パンフォーカスを作ると、真の解像面以外がだらしなくなります。

ありがとうございました。

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