Sonnar × ソ連品質 ≒ ∞
おすすめ度
購入のしやすさ 4/10
以前よりも流通量は確実に減少していますが、まだ普通に、中古市場で流通しています。その中でもL39(Zorkiマウント)は少なく、状態の良いものは価格も高めです。Kievマウント( Contax C 内爪)であっても、価格は確実に上昇しており、Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm 1.5よりも高い価格で販売されていることもあります。
使いやすさ 5/10 (8/10)
減点対象
- Kievマウント( Contax C 内爪)のレンズは、最短撮影距離が長めです(マウントアダプターに依存)。
- ダブルガウス型のF1.5よりも、被写界深度が浅く、開放で近接で使うのは困難です。
使いやすい点
- 小型で軽量のレンズです。
- 線が太い描写ですが、ピントの山は比較的分かりやすいレンズです。
- 絞りは、F値に関わらず常に円形を描きます。
現代レンズと比較した描写の独自性 8/10
- 光が多いと、画面全体がフレアで覆われます。これぞロシアンレンズといった趣です。ZeissのSonarに比べて、コートが貧弱なのでしょう。
- 開放では、圧倒的なボケが表れます。
- ボケは自然で、煩すぎません。
- わずかですが、周辺が減光することがあります。
- フリンジが発生することがあります。
- ガラスの素材による黄変(放射性ではない)により、暖色系に転びやすくなります。
- 絞るとSonnarらしい、濃厚な色になります。
総合 8/10
流通量が減ってきて、状態の悪いKievマウント( Contax C 内爪)であっても高価です。Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm 1.5が買える価格にまで迫っています。この点から、購入のしやすさは低く評価せざるを得ません。しかし、圧倒的ボケと線の太い描写の、Sonnarの醍醐味が堪能できます。加えて、逆光耐性が劣ったり、低い製造品質といった、ロシアンレンズの味わいも十分に堪能できます。非常に癖(個性)が強く、楽しいレンズレンズです。
このモデル
言わずと知れた、Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm F1.5のコピーレンズです。
東ドイツのCarl Zeiss Jenaの設計者、技術者、イエナガラスを用いて、ソ連で製造されたモデルです。Camera-wiki.orgでは、1954年にはソ連製ガラスとなったとの記載がなされています。イエナガラスの在庫が底をつき、ソ連製ガラスが採用された時期に、素材の変化に合わせて再設計されています。このタイミングで製造の中心が、KMZ(クラスノゴルスク機械工場)からZOMZ(ザゴルスク光学機械工場)へ移されたようです。Soviet CAMS.comによるとKMZでは1951-1956までJupiter-3の製造が行われていました。KMZ製のうち、ソ連製ガラスを用いた新設計Jupiter-3は、1955年~シリアル番号 #000001~として出荷されたそうです。ZOMZに製造を移してからは、すべて、新設計Jupiter-3なのだと思われます。
今回私の手元にある、Kievマウント( Contax C 内爪)のJupiter-3は、製造番号55から始まる、KMZ(クラスノゴルスク機械工場)のマーク付きの銘板を付けています。レンズは黄変しています。この「非放射性の黄変は、新種硝子材の問題である」と説明されているのを、多く見かけます。大日本ソ連カメラさんの記事でも確認出来ます。この記事の写真では、1950年のKMZ製造のJupiter-3でも、1963年のZOMZ製造のJupiter-3でも黄変が認められます。本当に、黄変の原因は硝子材なのでしょうか?バルサム材の劣化でしょうか?いずれにせよ、この黄変は、Jupiter-3に個性を付与するチャームの1つになっています。
撮影準備
マウントアダプター
市販品
王道はContax C(内爪)マウントアダプターです。欠点はかなり高価です。
- 内爪使用可能 + ヘリコイド使用可能
- 外爪使用可能
数年前からは圧倒的に安くなったマウントアダプターですが、今でも相当高価です。AliExpressで、比較的安価なものを入手しました。
・Contax C - L39, L39 - LM, LM - NEX(ヘリコイド)
・Contax C - L39, M39 - M42, M42-M42(10-15mm), M42-NEXプレート
で接続可能です。
下は、同様に多少安価なものが販売されていますが、ヘリコイド機能が無いみたですので、最短撮影距離が1mほどになると思います。
価格を抑えるならば、下のヘリコイド付きをAliExpress購入することをおすすめします。
しかし、焦点工房のSCM1が必ずしも使えないというわけではありません。SCM1は LM-NEX(マイクロヘリコイド付き)などを使う前提の商品です。
Contax C(内爪)マウントアダプターのヘリコイドと LM-NEX(マイクロヘリコイド付き)のヘリコイドを比べると、 LM-NEX(マイクロヘリコイド付き)のヘリコイドの方が、圧倒的に使いやすいと思います。
もっとも、Contax RFにより近い、フォーカシングは、Contax C(内爪)マウントアダプターであることには間違いがありません。
カメラボディーキャップの応用
M42マウント用のカメラボディーキャップに穴を開けて、3M両面テープで固定して、M42ヘリコイドマウントアダプターでフォーカスシングする方法です。SONY Eマウントでは、M42ヘリコイドは17-31mmが適合します。これに、M42-NEXの1mmプレートを付けると、オーバーインフで、無限遠が出せます。
3Dプリンター出力(STLデーター)
M42ボディーキャップに穴を開けたものに相当するSTLデータをアップロードします。これを、3M両面テープで固定して、M42ヘリコイドマウントアダプターでフォーカスシングします。SONY Eマウントでは、M42ヘリコイドは17-31mmが適合します。これに、M42-NEXの1mmプレートを付けると、ちょうど無限遠が出せます。
リアキャップ
M42延長
M42ボディーキャップに連結して使用した場合、リアキャップが問題になります。そこでM42を延長したキャップを作成しました。
Contax C(内爪)リアキャップ
オリジナルの状態で使うことを想定し、リアキャップを出力しました。
今回は
王道Contax C(内爪)マウントアダプター(L39)+L39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き)を用いました。この個体は、完全にマウントアダプターに、完全にはフィットしないという、曰く付きの個体でした(ある意味、ソ連製らしいレンズです)。
撮影(作例)
圧倒的なボケです。Canon 50mm F1.4よりも、被写界深度が浅い気がします。
黄変のせいか、暖色に転びやすくなります。
ロシアレンズらしく、光が多いと、画面がフレアで覆われます。
わずかですが、周辺光量落ちが発生することもあります。
フリンジも発生します。
開放では、光源は輪郭が強調された、円ボケになります。
絞ると、Sonnarらしい濃厚な色の描写になります。
ありがとうございました。